徒然なる日々

るくりあが小説を載せたり舞台の感想を書いたりするもの。小説は文織詩生様【http://celestial-923.hatenablog.com/about】の創作をお借りしています。

2016-01-01から1年間の記事一覧

赤を背負って生きる僕らは

01.生きたいと願うのはいつの日か 母さんは父さんとの結婚を決めた時、それはそれは反対を受けたのだと言う。あの赤髪一族と結婚しては幸せになれないと。 姉さんが生まれた時、とても喜ばれたと言う。でも、俺の時は違った。いや、一応は喜んでくれたらしい…

Monochrome

世界が白と黒だったら良かったのになんて、この時初めて思った。 Monochrome きっかけは偶然聞こえたバルヒェットくんの一言だったと思う。 「なぁなぁ知ってるか?赤髪の奴って先祖はエヴィノニア人なんだってさ!」 いつもバルヒェットくんと一緒にいる子…

貴方のいない世界で

I.貴方の面影は その日は粉雪が舞っていた。 「お父さん、お母さん早く!」 ふわふわとした雪に心もふわふわしてくる。くるくるとその場で回る私をお父さんは駆け寄ってきて抱き上げた。高い位置で回る世界に声を上げる。 この国に来て初めてのお父さんとの…

海の聲

親切な車が止まってくれた。 会釈をし、小さな手を引いて道を渡る。 防波堤の向こうに蒼い海原が広がっていた。 立ち止まった俺をリアが不思議そうに見上げる。まだ背の低いリアには防波堤の向こうが見えていないのだと気づき、抱き上げて防波堤の上に上がろ…

XXyears ago

「ただ〜いま〜。」 「おかえり。もうすぐ夕飯だから手を洗っておいで。」 そう言った兄貴の孔雀色の瞳がじっと俺のことを見つめる。 「な、なんだよ兄貴。」 居心地が悪くなってついぶっきらぼうに問うと兄貴は困った顔をして笑った。 「セージ、また怪我し…

Graffias

「貴様にとって仲間とは何だ?」 ここに来て以来1日のほとんどを一緒に過ごす男がそう言った。 「何だよ、藪から棒に。」 曰く、カレンと話している時の俺は娘のことを話している時に似ている。 「何だろうな、家族じゃないんだけどな。まぁ “目が離せない奴…

twitter小ネタ

炎暑の蝉時雨と煩悩と あれはいつだったか…そう、ちょうど今頃のように暑い日が続くそんな日だった。 俺は出来心で汐海の寝間着を隠した。そうしたら、あいつは俺のいないところでそれはまぁえっちな格好でいたわけだ。 というのも俺の寝間着を着ていたわけ…

セーミラでいろんな色で10題

01.朱 「貴様はその髪色で困らなかったのか?」 隣に座る調子のいい男にふと気になったことを尋ねる。なんでも黒と青を尊ぶ国柄であるらしくこの男が纏う軍服にもそれが如実に表れている。 ぼーっと風に吹かれていたらしい男はへ?と間の抜けた顔を晒した。 …

沈々

ナルさんが告げた言葉に目の前が真っ赤に染まった。激情に任せるまま引き金を引く。その時のナルさんはどこか満足そうだった。ナルさんが除隊されてから1週間が経った。今日も今日とて軍の本部、蝋燭に照らされた仮眠室に月明かりが差し込む。銃は剣と違って…

昇々-The sun rise again-

「なぁ、ナルセ。お前はどこで死にたい?」 その日はセージさんの家で呑んでいた。家族が眠り、夜も更け、静かに呑んでいた時、俺の上司はポツリとそんな事を漏らしたのだ。 「そんな縁起でもないこと言うなんてセージさん、実は酔ってる?」 俺の言葉に、か…

不離

白髪の少女は座っていた。少女が愛した人と共に。彼の髪と同じオレンジの花弁が風で巻き上がる。少女は座っていた。ずっとずっとそこに。彼はそのオレンジの髪を散らして花畑に寝転がっていた。傍には愛しい少女。じわりと涙を浮かべるその姿に困ったように…

とある一軒の家。そこには青年と少女が暮らしていた。2人は共に軍に所属し時には命に関わるような任務もあったが、幸せに暮らしていた。そんなある日彼に極秘の任務が言い渡された。誰一人としてその内容を告げてはならない。そう言われた彼は残された3日を…

子煩悩-Trick or Treat!-

「あ、ミランさん、飴持ってく?」 「飴…?そんなものは必要ない。では、行ってくる。」 「リアー、パパにいってらっしゃいのちゅーは?」 「今日もやってるの?飽きないわねぇ…。」 「いーの、毎日してもらうんだから。じゃ、いってくるわ。」 10月31日。人…

劫-revised edition,I keep on loving him-

「第六特殊部隊第一諜報部グラフィアスに告ぐ。エンハンブレ国境の地で長期の戦闘命令がくだった。出陣は1ヶ月後、皆に身の回りの整理をしておくようにと。」 恐らく最後の、いや、最期の出陣になるだろうと思った。 “身の回りの整理をしておけ” その言葉が…

不離-revised edition,I saw a daydream-

リオラは戦場が見渡せる小高い丘の上に立っていた。草木が朱く染まる大地を漆黒の馬が駆けてくる。 周りには誰も居ない。いや、“居た”と言うべきか。最も近くにいた厳しい彼は大切なものを守り、死んだ。こんな私に懐いてくれた2人の部下は今、私を守るため…