徒然なる日々

るくりあが小説を載せたり舞台の感想を書いたりするもの。小説は文織詩生様【http://celestial-923.hatenablog.com/about】の創作をお借りしています。

2017-01-01から1年間の記事一覧

ある聖夜の過ごし方

「テオ。」 冬の寒さも厳しくなった頃、帰ろうとしていたテオをフェンネルは呼び止めた。 「なぁに?」 「クリスマス・イヴはもう予定が入っているかい?」 ん〜と悩むフリはしているが実際はテオに予定はなかった。一夜限りの相手を探すのも何か違うと思っ…

あの日に取り残された僕ら

―父さんの死んだ日はオランジュのローラン・フォートリエが死んで、エンハンブレのローラン・フォートリエが生まれた日になった。俺は今日も、異国の地で息を、している。 それは、俺とリアが入軍して一年が経った頃。「反乱分子がいないかどうか、調査して…

現に常世の花が散る

―貴方が幸せだったかどうか、私には分からない。けれど、最期の貴方は満足そうだったから、きっと幸せだったのだと、私はそう思いたい。 * 今、思い出してみると、彼女は幼い頃から人とは違う雰囲気を纏っていたように思う。意志の強そうな瞳は黎明色に輝い…

とある昼の男たち

さて、モーニングを食べ終えた俺とミランは某ドラマの撮影現場に足を運んでいた。 「よ!マルセル、元気にしてるか〜?」 現場の隅の方で座っていたマルセルに声を掛けると慌てた様子で椅子から立ち上がりペコリとお辞儀した。 「お久しぶりです、ロルカさん…

fragile

あの日から彼の様子が変だ。姿が見えないから、探しにいくといつも、遠くを見つめている。そして瞳を揺らがせて、半笑いでため息をつく。今日は中庭の芝生の上に座り込んでいた。 悩みの種は分かっている。でも、私には兄弟がいないし、この国で生まれて、こ…

書きたいところを書きたいだけ書く その5

【聖杯戦争…?Ⅲ】 「ごめんね、マスター。言えない…言えないんだ。」 みっともなく声が震える。その時、温かいものが僕の頬に触れた。 「馬鹿ねぇ…。」 そう言って困ったように笑う彼女は記録に残る彼女とは違う人物なのだと思い知らされた。 「本当にごめん…

書きたいところを書きたいだけ書く その4

【聖杯戦争…?Ⅱ】 「ねぇねぇキャスター。今まで誰も来ないけど本当に戦争してるのかな?」 夜道は2人の足音とコンビニの袋が立てるガサガサという音だけが響く。 「うーん、まだ召喚されていないのかもしれないね。それに…今来られたらテオはお腹空いてて戦…

書きたいところを書きたいだけ書く その3

【あなたがそこにいた頃】 「おっひる〜おっひる〜!」 「テーオ、まだだよ。」 腕に大量の食べ物を抱えたテオが執務室に入ってくる。 「…今日はずいぶん沢山あるね?」 その言葉にテオはニヤリと笑う。 「さっきナルセがくれたんだ〜。いいでしょ〜?」 ま…

書きたいところを書きたいだけ書く その2

【面影】 諜報員として自国に潜入することになった。 「ローランくん?」 前を歩くリアが振り向いた。エヴィノニアやその周辺でよく見る赤髪と緑目。オレンジがかっていないのはやはり、ここに生まれたからに他ならない。 「ん〜?」 この任務は俺が自国では…

書きたいところを書きたいだけ書く その1

この近所の商店街もピリピリしてきたと思った。前線から帰された元兵士や、これから向かうのであろう若者。以前よりずっと多く見かけるようになった。 「前から知っている人の店以外には行くなよ」ナルさんにもそう注意されている。都心はもっとピリピリして…

Homeparty…?

「ホームパーティー…?」 「そうだ。親しい人をもてなすのだが、妻が是非、レノに来て欲しいと言うのでな。もちろん、リヴィちゃんも一緒に。」ふむとレノックスが思案する。事件も解決し、レノックスは憑き物が落ちたように穏やかになっていた。相変わらず…

Fの仕事のない1日

【前日】 「うーーーーんっ!終わった〜。」 窓からは西日が差し込んでいる。 ぐるりと首を回せばゴキリと音が鳴った。 ふぅと一息ついてそちらを見やると、僕の執務室に入り浸っているテオが恨みがましそうな顔を向けていた。 「ずるいよフェンネル〜!俺な…