徒然なる日々

るくりあが小説を載せたり舞台の感想を書いたりするもの。小説は文織詩生様【http://celestial-923.hatenablog.com/about】の創作をお借りしています。

PSYCHO-PASS Virtue and Vice

PSYCHO-PASS Virtue and Vice』

 当時の私は「舞台オリジナルか〜、拡樹くん主演だし当たらんだろ。」と観劇しなかったが、いやマジ観れば良かった、と後悔するレベルで良い作品だった。

 

以下、抽象的に書いているつもりだが、ネタバレに注意。

 

 まず、アニメ一期からの脚本家による圧倒的なストーリー構成。

 約2時間の公演の中で、アニメとはまた違った事件とシビュラの闇を描いていて、何というかすごい。

 この作品では、「人間らしさとは何か」がテーマで、 PSYCHO-PASSシリーズ内で幾度となく取り上げられてきた「潜在犯は犯罪者」か、シビュラシステムで管理された世界は正しいのか、が中心に取り上げられていた印象。

 拡樹くん演じる潜在犯を信頼していない監視官、九泉と和田くん演じる潜在犯を信頼する監視官、嘉納。まるで一期以前のギノと狡噛、一期のギノと朱ちゃんを彷彿とさせるような対立関係だが、この2組と違うのはお互いのことを全く理解できていないこと。ここが最後までキーになっていたのかな、と思う。

 あと、本編に全く関係ないのだけれど気になったのは作戦実行中のコールサインについて。恐らく舞台版は原作ファンではなくて俳優ファンも来るためか、「シェパード」「ハウンド」のコールサインは使われない。原作ファンとしては、ちょっと違和感というか、もったいない感もあったが仕方ないのかな。

 

 次に音楽。

 私は時雨のファンなので、舞台に提供された音源(laser beamer)は知っていたが、個人的にはabnomalize使っても良かったのでは???と思ってしまった(ファンとしてクソ)。

 ただ、この舞台との歌詞の親和性は抜群。時雨らしい抽象的な歌詞と舞台のテーマがあっていて、舞台を観てから歌詞カードを見るとすごい。

 それは置いておいて、作中の主要音楽はアニメ版から抜粋。特に印象的だったのが最終シーンの楽園で、もうこれはさ〜(察してください)。アニメの劇中曲がどのシーンで使われていたか分かっているとよりグッとくる演出でした。

 他にはドミネーター、望み(光かも。該当アレンジが見つけられなかったので他の曲?)、 PSYCHO-PASSなんかが使われてて、アニメファンとしては嬉しかった。

 

 最後に特に印象的だったキャラクターについて。

 まず執行官の大城くん。彼は一期のトラウマキャラ、縢くんをイメージしてもらえれば。縢くんとは違って、諦観しているのではなく、自分の信じる人を希望として生きているタイプ。

 ただ、分かっていたけど彼の最期も中々で、けれど決して恨まないところが似てるな〜と思いました。

 

 次に私の推しキャラ、蘭具くん。オタクキャラ、という設定はあるものの、他の濃いメンツに比べると薄い印象。続編のVV2には名前違いで登場しているそうで、何やら過去にあったのかな……?元漫画家って言ってたけどな???

 その辺りはちょっとよく分からないのだが、とりあえずまぁ背が高いのでアクションが映える映える。インテリかと思いきや意外と武闘派だったり、クールに見えて実は熱い、そんなギャップ萌えなキャラでした。これ以上は言うまい。

 

 そして主人公、九泉くん。これだけ主人公が自分の道を惑うのも初めてじゃないか?って感じ。

 アニメ版で近いのは宜野座さん。彼の場合は潜在犯落ちへの恐怖だったけど、九泉くんは、自分を正当化するための潜在犯嫌いな印象。

 この辺りは最終的にキーになるのでネタバレを控えるが、最終的に嘉納の提案に対して、彼の出した答えがとても印象的。

 それが例えシビュラの意図に沿わずとも彼がその答えを導き出したことに観客としては感動した。

 

 てなわけでまとめる。

 VV2をやっていたのを知っていたので、この展開にはびっくりしたが、まぁシビュラならそうするなと納得の作品。

 やっぱり舞台版ということもあって、人間性や過去について掘り下げる暇はないので、その辺りが気になる人にはおすすめできないが、それを除いても PSYCHO-PASSファンは観てみても良いんじゃないかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

以下、ラストシーンについて言及するので、ネタバレ注意。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 舞台暗転後、楽園のBGMと共に光の方へ向かう目黒さんのシーン。人影は6人、目黒さんが向かうとなれば、3係の結末はお察しの通りという感じ。

 でも、きっと皆一様に楽園を見つけられたのかもしれないなと思った。(そういうところが深見さんの脚本らしさ)

 

 

 

 

 

 

(蛇足)

 知恵袋で最期はどうなったか分からない終わり方をしていると回答していた人を見かけたが、深見さんがここまで描いて彼らの物語に続きがあるようには……ね。

 正直舞台版だし、いやいや1人ぐらい生き残るっしょ〜って中盤まで思ってた私を殴りたい。というか全員死んだのシリーズ通しても初めてでは???人が死にまくった2期ですら須郷さんとか生き残ってるしね??

 本編でちょこちょこ潜在犯から色相がクリアになる人も見ているので、余計に……ね?

 

 あと、本当にこれ蛇足だけど、目黒さんが「パートナーと養子とで暮らしていた。」って話をしていて、深見さんは毎回そういう要素も取り込んでくださるな、と思った。流石です。