白と黒の英雄譚-novelization-
―父さんの死んだ日はオランジュのローラン・フォートリエが死んで、エンハンブレのローラン・フォートリエが生まれた日になった。俺は今日も、異国の地で息を、している。 それは、俺とリアが入軍して一年が経った頃。「反乱分子がいないかどうか、調査して…
01.生きたいと願うのはいつの日か 母さんは父さんとの結婚を決めた時、それはそれは反対を受けたのだと言う。あの赤髪一族と結婚しては幸せになれないと。 姉さんが生まれた時、とても喜ばれたと言う。でも、俺の時は違った。いや、一応は喜んでくれたらしい…
世界が白と黒だったら良かったのになんて、この時初めて思った。 Monochrome きっかけは偶然聞こえたバルヒェットくんの一言だったと思う。 「なぁなぁ知ってるか?赤髪の奴って先祖はエヴィノニア人なんだってさ!」 いつもバルヒェットくんと一緒にいる子…
I.貴方の面影は その日は粉雪が舞っていた。 「お父さん、お母さん早く!」 ふわふわとした雪に心もふわふわしてくる。くるくるとその場で回る私をお父さんは駆け寄ってきて抱き上げた。高い位置で回る世界に声を上げる。 この国に来て初めてのお父さんとの…
「なぁ、ナルセ。お前はどこで死にたい?」 その日はセージさんの家で呑んでいた。家族が眠り、夜も更け、静かに呑んでいた時、俺の上司はポツリとそんな事を漏らしたのだ。 「そんな縁起でもないこと言うなんてセージさん、実は酔ってる?」 俺の言葉に、か…
「あ、ミランさん、飴持ってく?」 「飴…?そんなものは必要ない。では、行ってくる。」 「リアー、パパにいってらっしゃいのちゅーは?」 「今日もやってるの?飽きないわねぇ…。」 「いーの、毎日してもらうんだから。じゃ、いってくるわ。」 10月31日。人…
「第六特殊部隊第一諜報部グラフィアスに告ぐ。エンハンブレ国境の地で長期の戦闘命令がくだった。出陣は1ヶ月後、皆に身の回りの整理をしておくようにと。」 恐らく最後の、いや、最期の出陣になるだろうと思った。 “身の回りの整理をしておけ” その言葉が…
リオラは戦場が見渡せる小高い丘の上に立っていた。草木が朱く染まる大地を漆黒の馬が駆けてくる。 周りには誰も居ない。いや、“居た”と言うべきか。最も近くにいた厳しい彼は大切なものを守り、死んだ。こんな私に懐いてくれた2人の部下は今、私を守るため…