映画『スウィング・キッズ』こんなご時世ですが、観てきました。
もう途中から胸が苦しくて苦しくて、何をどう言ったらいいか分からないですが、思ったことをつらつらと書いておきたいと思います(ネタバレ注意かも)。
まず、しばらくおかわりは要らないなと思いました。しんどすぎて。
鳥肌が立つような音楽、演技、熱いタップダンス。それに冷水どころか氷水を浴びせるようなラスト。
もう最近涙腺が弱すぎてすぐ泣くんだけど(マジで)、やっぱり泣きました。
ハッピーエンドはすぐそこだったのに、どうして。
小さな、他の人にとってはどうでも良いような、そんな幸せさえ、時代が許さなかったということなのかなと私は思う。
つらい。でも、落ち着いたらまた観たい。
とにかく音がすごい。
そもそも公開から結構経ったのもあって、足を伸ばして【極上音響】とかいうので観てきたのもあるけど、すごかった。生音やべぇ。
劇中で「Sing,Sing,Sing」が生バンドで演奏されるシーンがあるんだけど、クラリネットソロのためにサックス奏者の隣にクラリネット置いてあって感動した(置いた向きが壊れる向きだったけど、時間なかったのかな)。
「Sing,Sing,Sing」いつか私も吹きたい。クラリネットソロは死にそうだけど。
ともあれ、音楽にこだわってる(?)だけあって本当すごかった。
内容的には、色々なものに雁字搦めで板ばさみのロ・ギスが、境遇も人種すら違う、けれど同じ人間の仲間たちと、自由を掴もうとしていくのが丁寧に描かれている感じがして、うん。
国境のないものってなんて素敵なんだろう。絵も、音楽も、ダンスも。言語を介さない、けれど伝わるものがあると信じさせてくれる。そんな映画。
でもそれは、大前提として平和でなければならない。
平和でなければ、それは悪にすらなる。
難しいね。
私、相変わらずぎょんすの目が大好きだぁ……。
贔屓目かもしれないけど、表情を取り繕っていても、目が心情を雄弁に語りかけてくるの、本当好き。
予告の印象に比べて、楽しそうにダンスしているシーンって実はそんなにないんだけど、それでも彼が楽しそうにダンスするシーンは心が洗われるような。
終盤のソロシーンは本当に本当感動した。
そうそう、ぎょんすのソロシーン、本当に鳥肌が立った!
彼の演技もそうなんだけれど、個人的には、舞台を照らすライト、観客の拍手、何もかもがリアルで。あの筆舌に尽くしがたい高揚感と、心の震えが伝わってきて。きっと彼が、皆が見ることができた景色が、そこにはあったんだなって。
ロ・ギスが、全てから解放されていて、このまま解放されたいと、されて欲しい願ったシーンでもあるんだと思うけど、それが幻であるのが現実。
そのあとは、現実に戻される。
あと、ロ・ギスには前線の英雄であるお兄さんがいるんだけど、彼がお兄さんの幸せを願うように、お兄さんも彼の幸せを願っていたんだなって。兄弟のシーンは本当に少ないけれど、お互いに慈しみ合っているのが本当に良く分かる終盤でした。
きっと、周りの皆もロ・ギスの幸せを、才能を応援していたはずなのに、ね。
なんというか、私が音楽をやれているのは、とってもとっても幸せことだなぁと思わされた。
今という時が、ずっと続けば良いのにと思うぐらい、楽しい時間はすぐに過ぎ去ってしまうけれど。
今年はコロナで、定期演奏会がなくなったけれど。
また次がある。生きてさえいれば。
まとめる。
彼らが、そこ居たのは現実で。彼らが、繋がっていたのも現実で。彼らが、全てから解放されていたのも現実で。
それなのに全て嘘になってしまう。
それでも、彼らは確かにそこで生きていた。
という感じ。
エンディングの「Free As A Bird」のメッセージがとても痛い。
自由は2番目。彼らにとって1番はなんだったんだろう。
一言で言ってしまえば、反戦映画。でもそれ以上に伝わってくるものがある。
皆、観てくれ……。
(この下マジでネタバレ)
最後、ジャクソンが収容所を去る時に、彼の顔の陰をタップスが反射した光(多分ロ・ギスのなんだろうね)が照らすんだけど、きっとあれは4人からのメッセージだったのかなって。
ダンスは彼らにとって、手段や目的もあったのかもしれないけれど、きっと希望の光だったと、ジャクソンがしたことは間違っていないと、後悔しないで欲しいと伝えたかったのかな、なんて思いました。
名前すら残らなかった彼らが、確かにダンスで繋がって、平等な関係で生きていたことを伝える講堂の傷が、とても悲しい映画でした。
しばらく「Sing,Sing,Sing」で泣くと思う(情緒不安定)。