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徒然なる日々

るくりあが小説を載せたり舞台の感想を書いたりするもの。小説は文織詩生様【http://celestial-923.hatenablog.com/about】の創作をお借りしています。

Fの仕事のない1日

白黒小話

【前日】

「うーーーーんっ!終わった〜。」

窓からは西日が差し込んでいる。

ぐるりと首を回せばゴキリと音が鳴った。

ふぅと一息ついてそちらを見やると、僕の執務室に入り浸っているテオが恨みがましそうな顔を向けていた。

「ずるいよフェンネル〜!俺なんかまだこんなに残ってるのに〜。」

「テオはやる気出せばそんなのすぐに終わるだろう?明日はオフなんだから頑張ろうな。」

机とお友達になりかけているテオに苦笑まじりに言えば、そうだけどさ〜と口を尖らせた。

「そういえば、フェンネルも明日オフでしょ?何するの?」

気になる気になる!といった感じで瞳を輝かせてくる。

「前はオフでも仕事していたんだけれどね、最近は優秀な部下が入ってくれたおかげで計画通りに進むからゆっくりしているよ。」

明日はリアと買い物に行くんだと告げるとテオはパッと身体を起こした。

「リアってセージの娘でしょ?会ってみた〜い!」

しまった、口を滑らせてしまったかと思ったが、それで仕事が捗るなら安いものかと思い直す。

「今日中にその山盛りの仕事が終わったらね。」

その言葉にテオのペンを持つ手が動き出した。

 

【当日】

「おっはよ〜!」

「おはよう、テオ。もうすぐリアも来る頃だよ。」

郊外にある自宅から少し離れた教会の前で待ち合わせた。

「テオは今日もトレンディだね。」

そうでしょ〜といいながらふふんと胸をそらす。いくつになっても変わらないなと思っていると道の向こうから目立つ赤がこちらに向かってきていた。

「お待たせしました。」

今日は珍しく髪を三つ編みに結っている。そういえば、昔は髪を結ってあげたこともあったっけ。

「おはよう、リア。」

隣で爽やかな笑みを浮かべているテオにリアの目線が行く。

「初めまして、ルクリアです。」

「初めまして、俺はテオドール。テオって呼んでいいよ。」

 じゃあテオさんって呼びますねと返すリアは軍学校に入って数年経ったこともあってか随分大人びていた。

「で、僕に付き合ってほしい買い物ってなんだい?」

少し頬を染めたリアはぼそりと呟く。テオの瞳が輝いたのを見て連れて来てよかったと思った。

 

「リア、これは?」

「…それはちょっと持ってるのに似てるんですよね…。これはどうでしょうか?」

着ていたコートを脱いでリアが持っていたコートを着る。テオが上から下まで眺めて首を振った。

「オーソドックスだけど、せっかくプレゼントするならあんまり選ばなさそうなのが良くない?」

そうですよね…と考え出すリア。正直疲れてきた。ナルセくんへのプレゼントでかれこれ1時間は悩んでいる。

「どうするの、リア。次のお店行く?」

「待ってフェンネル、これ最後!これ着てからにして!」

テオがパッと持ってきたのはスタンドカラーのミドル丈のコート。少し灰色っぽい薄青のコートだ。

「これ、若くない?いくら僕が年相応の顔してなくてナルセくんと髪色の雰囲気似てるからってこれは…。」

いいから着てよとテオには言われるし、リアは期待の目で見てるしで渋々袖を通す。

「どうかな?」

くるりと一回りして聞けばリアが大きく頷いた。

「これにします!」

ようやくかとコートを脱いで店員に渡す。会計に向かったリアを見送る。

「外に出ていようか…テオ?」

「…おなかすいた。」

さっきまで嬉々として服を選んでいたテンションはどこにやったのか縋るようにこっちを見て訴えてくる。

「はいはい、この近くの店に入ろうね。」

店を出るとどんよりとした空に枯葉が舞い始めていた。最近は寒さが身に染みるようになってきた。歳かな…。

「お待たせしました。」

しばらくして大きな包みを持ったリアが出てきた。持つよとリアから包みを受け取って歩き出す。

「今日は買い物に付き合ってもらって、ありがとうございました。」

微笑んで言うリア。こんな風に笑えるようになったんだなと、また時の経過を感じた。

「どういたしまして。」

「いいよ〜、俺もリアに会ってみたかったし。」

テオの言葉に小首を傾げるリア。テオは屈託無く笑う。

「セージがものすごく自慢してたし…。それにナルセの大事な人なんでしょ?」

邪気のないその言葉にリアの顔が真っ赤に染まる。

仕事のない1日はいつもより少し短く、楽しく過ぎていった。

 

【後日】

フェンネル〜。おなかすいた〜。」

「じゃあそれが終わったらおやつにしようか。リアがシュネーバルを作って持って来てくれたんだよ。」

テオの目が輝いて、ペンを持つ手がひらめいた。

次の休みはお菓子でも作ろうか。そんなことを考えながらティーポットに茶葉を入れた。