徒然なる日々

るくりあが小説を載せたり舞台の感想を書いたりするもの。小説は文織詩生様【http://celestial-923.hatenablog.com/about】の創作をお借りしています。

沈々

ナルさんが告げた言葉に目の前が真っ赤に染まった。激情に任せるまま引き金を引く。
その時のナルさんはどこか満足そうだった。

ナルさんが除隊されてから1週間が経った。
今日も今日とて軍の本部、蝋燭に照らされた仮眠室に月明かりが差し込む。銃は剣と違って人の死を手に伝えることはない。だけど、それを手入れしていた手が震えだす。あの日が脳裏に蘇った。

考える。お父さんが知っていたことはアンリさんも知っていたんじゃないかと。知っていながら知らないフリをしていたんじゃないかと。
そう考え出したら私は家に帰れなくなっていた。ナルさんの遺品は軍に回収されてしまったから何も無いはずなのに、料理をする時に2人分の材料を用意してしまったり、先にお風呂を勧めようとしたり、私の行動にはナルさんの名残があるから。
もう居ないのだと気づくたびに呼吸が浅くなる、身動きが出来なくなる。
意識を飛ばそうと眠れば、あの夢で倒れるお父さんがいつの間にかナルさんに変わっている。

私は、私はナルさんに、ナルさんのことを…。