徒然なる日々

るくりあが小説を載せたり舞台の感想を書いたりするもの。小説は文織詩生様【http://celestial-923.hatenablog.com/about】の創作をお借りしています。

金の花に盞を交わす

―貴方はまだ、知らない。 私たちは本当の兄妹ではないということを、私が知っているということを。 けれど、貴方がそう望むのなら、私はそれに従うだけ。だから、私は精一杯の笑顔を浮かべた。心が軋んだ音を立てるのを無視して。 貴方が望むのなら、私は貴…

Sailor's valentine

淡い山吹色の花と、それを幾重にも囲むのは輝く貝殻。花さえ貝殻で作られたそれを、母は薄く頬を染めて自慢げに見せた。 隣をちら、と見れば黎明の瞳を輝かせた君が、母に謂れを聞いている。 「船乗りが陸で待つ家族や恋人に贈るの。」 こう見えて器用なのよ…

夜を舐める Rewright

_____憧憬には、いつも君がいる。 「……ナルさん?」 窓の外に浮かぶのは十六夜。隣で穏やかな寝息を立てていたはずの、あの人が大切にした幼子が、身体を起こしている。 「ごめん、起こしたか?」 その子は少し口を開いた後、唇をほんの少し噛んだ。そして、…

書きたいところを書きたいだけ書く その7

※魍魎少女っぽいパロディ+結構前に話した妖怪っぽいパロディのミックス ※舜槿様の不老不死設定を↑に合うように解釈しています。(グロめです。ご注意。そしてごめん……。) 昔々、そうじゃな、ざっと1000年ほど前じゃったかの。わしはとある国を訪れていた。…

PSYCHO-PASS Virtue and Vice

『PSYCHO-PASS Virtue and Vice』 当時の私は「舞台オリジナルか〜、拡樹くん主演だし当たらんだろ。」と観劇しなかったが、いやマジ観れば良かった、と後悔するレベルで良い作品だった。 以下、抽象的に書いているつもりだが、ネタバレに注意。 まず、アニ…

擬似家族

0.重なる影 中央に置かれた棺と、その周りに飾られた花。そしてキチッとスーツを着て快活に笑う赤髪の男。左右に分かれた親族の左側には、真っ赤に目を腫らした黒髪の女性と義父、義母らしき老夫婦が座っていた。右側には喪主らしい亜麻色の髪の男性とその隣…

『スウィング・キッズ』(原題:스윙키즈)

映画『スウィング・キッズ』こんなご時世ですが、観てきました。 もう途中から胸が苦しくて苦しくて、何をどう言ったらいいか分からないですが、思ったことをつらつらと書いておきたいと思います(ネタバレ注意かも)。 まず、しばらくおかわりは要らないな…

書きたいところを書きたいだけ書く その6

Outfoxing the foxes game ツイてないなと思った。流された先は敵国で、なおかつ俺を見つけたのは、エンハンブレでも指折りの軍人一族ロルカの人間だった。 男のお陰で軍部に潜り込むまでは良かったが、飄々として、実力の読めない男を信用することはできな…

彼は誰に常世の花を抱く

―彼女は泣いた。言葉なんて要らないから、そばに居てくれ、と彼の骸を抱いて泣いていた。それがとても悲しく、そして羨ましくもあった。私には、私とともに歩み続けてくれる人はいないから。 * 彼女と出会い、彼の最期を見届けた時は彼女と行動を共にし、寿…

深淵の彼岸 Episode.1

「警部補!エンフィールド警部補‼︎」廊下を歩いていた赤髪の男が振り返る。一つに束ねられていたそれが弧を描いて舞った。「何の用だ。」「さっきのご遺族の話です!あんな言い方ないですよ。確かに素行の良い娘さんとは言えなかったのかもしれません。」で…

ある聖夜の過ごし方

「テオ。」 冬の寒さも厳しくなった頃、帰ろうとしていたテオをフェンネルは呼び止めた。 「なぁに?」 「クリスマス・イヴはもう予定が入っているかい?」 ん〜と悩むフリはしているが実際はテオに予定はなかった。一夜限りの相手を探すのも何か違うと思っ…

あの日に取り残された僕ら

―父さんの死んだ日はオランジュのローラン・フォートリエが死んで、エンハンブレのローラン・フォートリエが生まれた日になった。俺は今日も、異国の地で息を、している。 それは、俺とリアが入軍して一年が経った頃。「反乱分子がいないかどうか、調査して…

現に常世の花が散る

―貴方が幸せだったかどうか、私には分からない。けれど、最期の貴方は満足そうだったから、きっと幸せだったのだと、私はそう思いたい。 * 今、思い出してみると、彼女は幼い頃から人とは違う雰囲気を纏っていたように思う。意志の強そうな瞳は黎明色に輝い…

とある昼の男たち

さて、モーニングを食べ終えた俺とミランは某ドラマの撮影現場に足を運んでいた。 「よ!マルセル、元気にしてるか〜?」 現場の隅の方で座っていたマルセルに声を掛けると慌てた様子で椅子から立ち上がりペコリとお辞儀した。 「お久しぶりです、ロルカさん…

fragile

あの日から彼の様子が変だ。姿が見えないから、探しにいくといつも、遠くを見つめている。そして瞳を揺らがせて、半笑いでため息をつく。今日は中庭の芝生の上に座り込んでいた。 悩みの種は分かっている。でも、私には兄弟がいないし、この国で生まれて、こ…

書きたいところを書きたいだけ書く その5

【聖杯戦争…?Ⅲ】 「ごめんね、マスター。言えない…言えないんだ。」 みっともなく声が震える。その時、温かいものが僕の頬に触れた。 「馬鹿ねぇ…。」 そう言って困ったように笑う彼女は記録に残る彼女とは違う人物なのだと思い知らされた。 「本当にごめん…

書きたいところを書きたいだけ書く その4

【聖杯戦争…?Ⅱ】 「ねぇねぇキャスター。今まで誰も来ないけど本当に戦争してるのかな?」 夜道は2人の足音とコンビニの袋が立てるガサガサという音だけが響く。 「うーん、まだ召喚されていないのかもしれないね。それに…今来られたらテオはお腹空いてて戦…

書きたいところを書きたいだけ書く その3

【あなたがそこにいた頃】 「おっひる〜おっひる〜!」 「テーオ、まだだよ。」 腕に大量の食べ物を抱えたテオが執務室に入ってくる。 「…今日はずいぶん沢山あるね?」 その言葉にテオはニヤリと笑う。 「さっきナルセがくれたんだ〜。いいでしょ〜?」 ま…

書きたいところを書きたいだけ書く その2

【面影】 諜報員として自国に潜入することになった。 「ローランくん?」 前を歩くリアが振り向いた。エヴィノニアやその周辺でよく見る赤髪と緑目。オレンジがかっていないのはやはり、ここに生まれたからに他ならない。 「ん〜?」 この任務は俺が自国では…

書きたいところを書きたいだけ書く その1

この近所の商店街もピリピリしてきたと思った。前線から帰された元兵士や、これから向かうのであろう若者。以前よりずっと多く見かけるようになった。 「前から知っている人の店以外には行くなよ」ナルさんにもそう注意されている。都心はもっとピリピリして…

Homeparty…?

「ホームパーティー…?」 「そうだ。親しい人をもてなすのだが、妻が是非、レノに来て欲しいと言うのでな。もちろん、リヴィちゃんも一緒に。」ふむとレノックスが思案する。事件も解決し、レノックスは憑き物が落ちたように穏やかになっていた。相変わらず…

Fの仕事のない1日

【前日】 「うーーーーんっ!終わった〜。」 窓からは西日が差し込んでいる。 ぐるりと首を回せばゴキリと音が鳴った。 ふぅと一息ついてそちらを見やると、僕の執務室に入り浸っているテオが恨みがましそうな顔を向けていた。 「ずるいよフェンネル〜!俺な…

赤を背負って生きる僕らは

01.生きたいと願うのはいつの日か 母さんは父さんとの結婚を決めた時、それはそれは反対を受けたのだと言う。あの赤髪一族と結婚しては幸せになれないと。 姉さんが生まれた時、とても喜ばれたと言う。でも、俺の時は違った。いや、一応は喜んでくれたらしい…

Monochrome

世界が白と黒だったら良かったのになんて、この時初めて思った。 Monochrome きっかけは偶然聞こえたバルヒェットくんの一言だったと思う。 「なぁなぁ知ってるか?赤髪の奴って先祖はエヴィノニア人なんだってさ!」 いつもバルヒェットくんと一緒にいる子…

貴方のいない世界で

I.貴方の面影は その日は粉雪が舞っていた。 「お父さん、お母さん早く!」 ふわふわとした雪に心もふわふわしてくる。くるくるとその場で回る私をお父さんは駆け寄ってきて抱き上げた。高い位置で回る世界に声を上げる。 この国に来て初めてのお父さんとの…

海の聲

親切な車が止まってくれた。 会釈をし、小さな手を引いて道を渡る。 防波堤の向こうに蒼い海原が広がっていた。 立ち止まった俺をリアが不思議そうに見上げる。まだ背の低いリアには防波堤の向こうが見えていないのだと気づき、抱き上げて防波堤の上に上がろ…

XXyears ago

「ただ〜いま〜。」 「おかえり。もうすぐ夕飯だから手を洗っておいで。」 そう言った兄貴の孔雀色の瞳がじっと俺のことを見つめる。 「な、なんだよ兄貴。」 居心地が悪くなってついぶっきらぼうに問うと兄貴は困った顔をして笑った。 「セージ、また怪我し…

Graffias

「貴様にとって仲間とは何だ?」 ここに来て以来1日のほとんどを一緒に過ごす男がそう言った。 「何だよ、藪から棒に。」 曰く、カレンと話している時の俺は娘のことを話している時に似ている。 「何だろうな、家族じゃないんだけどな。まぁ “目が離せない奴…

twitter小ネタ

炎暑の蝉時雨と煩悩と あれはいつだったか…そう、ちょうど今頃のように暑い日が続くそんな日だった。 俺は出来心で汐海の寝間着を隠した。そうしたら、あいつは俺のいないところでそれはまぁえっちな格好でいたわけだ。 というのも俺の寝間着を着ていたわけ…

セーミラでいろんな色で10題

01.朱 「貴様はその髪色で困らなかったのか?」 隣に座る調子のいい男にふと気になったことを尋ねる。なんでも黒と青を尊ぶ国柄であるらしくこの男が纏う軍服にもそれが如実に表れている。 ぼーっと風に吹かれていたらしい男はへ?と間の抜けた顔を晒した。 …